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が現れるまでには至っていない。このため、一つには「持統可能な発展」の先進的事例となるように、豊かな自然を取り戻し、人と自然との共生が図られた地域の実現を目指していこうとするものである。
土地需要に応じ江戸時代以降130km2の埋め立てがなされてきた大阪湾では、市民が安全に立ち入ることのできる水際線延長は、特に開発の進む湾奥部では3%にすぎない。二つ目には、高質な生活環境がもとめられる中で、面的・体系的な整備を通じて、豊かな生活を実感できるような、海と港の個性を活かしたアメニティ豊かな空間の形成を目指していこうとするものである。
4−3.「次代に引き継ぐ、星がで美しい環境の創造」
人と自然の共生するアメニティ豊かな大阪湾を、実現するための港湾整備の基本方針として、「次代に引き継ぐ、豊かで美しい環境の創造」が掲げられている。大阪湾全体を持続可能な発展を目指した環境と共生する港湾(エコポート)のモデル地域と位置づけ、湾全体の環境の保全・創造を図ることとし、4つの主要施策を掲げた。
?大阪湾港湾環境計西の策定
生物生態系に配慮し、自然と共生した、アメニティ豊かな、環境1への負荷の少ない大阪湾地域の実現をめざし、大阪湾全体の環境保全と創造について各港が連携して総合的、計画的に取り組むためr大阪湾港湾環境計画」を策定する。
?質の高い海域環境の創造
水質・底質の改善のため、汚泥の除去、覆砂、礫間接触、リビングフィルターなどを活用、浮遊ごみ等の回収を行う。また、生物生息の場を積極的に創出するため、海浜、干潟、浅場や、護岸・防波堤を活用した藻場の造成などを進める。新たな開発や再開発にあたっては、その整備と環境創造を一体として行うよう努める。
高度成長期の初期以前には大阪湾の海域環境が良好であったとされることから、この間に失われた約2,000haの海浜、干潟、浅場などの機能を取り戻すこを目標とする。
?アメニティ長かな港湾湾環境の創出
人々が安全に立ち入れるウォーターフロントが少ない大阪湾に、海浜や緑地など自然とのふれあいの場やマリーナなど賑わいの場の形成、歴史的港湾施設の保全と利用、良好な環境の形成など、多様で快適な港湾環境の創出を図る。これらの空間は、市街地や海からのアクセスも確保しつつ、湾全体でネットワークが形成されるよう配置する。
?廃棄棄物問題への対応
大阪湾の限りある空間を今後とも幾世代にもわたり多様に利用していくため、発生する廃棄物や建設残土は減量化・再資源化・有効利用をこれまで以上に徹底して行い、なお陸上での対応が困難な場合には、神戸港、大阪港などにおいて新たな空間利用との整合をとりつつ、広域処分場を整備し受け入れるものとする。

5. 大坂湾港湾環境計画の方向

各港湾の秩序ある発展を実現するための基本方針としての「大阪湾港湾計画の基本格想」で、主要施策として「大阪湾港湾環境計画」の策定を唱っている。
開発、利用あるいは保全という各港湾の発展の面からとりまとめた基本構想を基本として、環境の保全・創造の側面から、今一度大阪湾を見直し、環境計画策定に向けた検討を行っている。
以下に、大阪湾港湾環境計画策定の基礎となる大阪湾(沿岸陸域を含む)の環境保全・創造の考え方を示す。
5−1. 大阪湾の環境保全・創造の基本的な考え方
(1)持続可能な発展を目指す積極的な環境創造
大阪湾地域は、人々に良好な環境を提供するとともに、世界に貢献していくことが求められており、その中で大阪湾は、経済的豊かさと環境を両立させ、持続可能な発展のモデルを示していくことが肝要である。このため、大阪湾の環境改善目標を明確にし、それに沿って特性の異なるゾーン毎に問題を解決することを基本に、過去の開発による環境への負荷を修復し、また、これからの開発においては、積極的に従前より良好な環境の創造を図る必要がある。
(2)生物・生態系など良好な自然環境の保全
環境は現存する総ての生物の後の世代から預託されたものであること、大阪湾が環境財であり沿岸陸域にとっての存立基盤であることを明確に認識する。この上で、自然形態の海岸線や陸海の連続性、多様な生物・生態系が保たれている空間や稀少生物等が存在する空間、大阪湾と紀伊水道・瀬戸内海との海水交換の場など、良好な自然環境の積極的な保全を図る必要がある。
(3)海陸の連携による環境保全・創造
大阪湾の環境保全・創造のためには、海域側の対応のみならず、地域社会経済を環境負荷の少ない循環型システムに変えていくこと、下水道整備や河川の自然浄化能力の向上を図ること等により、大阪湾への流入負荷を抑制していくことも重要である。このためには、知識の普及と海域環境の保全・創造に対する市民、各自治体・省庁のコンセンサスの形成を図り、海陸の連携による環境保全・創造を展開していく必要がある。
5−2. 大阪湾の環境保全・創造方針
大阪湾の環境保全・創造を進めていくためには、上記の3つの基本的考え方に基づき、海域に対しては「生物多様性の維持・回復」を、沿岸陸域に対しては「パブリックアクセスが確保されアメニティ豊かな環境:の創出」を目標として、海陸が一体となった環境保全・創造のための施策を展開していくことを検討している。

 

 

 

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